Yaleの精神薬理学の教授であるDumanは、キャンパスからほど近い場コネッチカット精神医療センターに研究室を構えている。うつ病の原因と薬理学的な機作について興味があった彼は、うつ病がここ40年来信じられてきたようにセレトニンの欠乏に起因するという単純な仮説では説明できないことに気づきました。ProzacやZoloftを摂取すると急激にセレトニンレベルは上昇するのに、それだけでは精神状態は改善されないのです。臨床家の間では数週間服用し続けて徐々に症状が緩和することが知られており、この時間差が何を意味するのかという疑問に触発され研究を続けられました。彼の結論はプロザックはセレトニンシステムとは無関係の神経栄養因子の産生を促すというものでした。
ウツ病などではどのようなメカニズムによって脳内での神経栄養因子の産生が抑制されるのでしょうか?社会的なストレスにより、サルの脳では海馬に解剖学的な異常が示すことが他の研究者によって示されていますが、ここでも神経栄養因子の欠乏が重要と考えられ、ついにGuould とDumanは別々に歩いてきた細い道から一本の幹線で合流することなりました。 90年代に入ると免疫学や発生学の領域において、細胞や組織の形成には「自己複製」と「系譜特異的な分化過程」が必要であることが示され、組織のホメオスタシスには新たな細胞の供給も必要と考えられようになりました。このような「概念の拡散」が神経生物学のパラダイムシフトに寄与した影響は測り知れません。 現在では成人においても神経幹細胞が存在することは一般に受け入れられていますが。生体内における本質的な役割については研究は緒についたばかりです。
”Untill the scientist has learned to see nature in a different way, the new fact is not quite a scientific fact at all"
p.s ストレスによる脳のdepressionは個体にとっては耐え難いものですが、集団全体にとってはどのような意義があるのでしょうか(安全弁?)?。ルワンダやスーダンの悲劇を思い浮かべると思考は停止していまいます。
昨日今日の文書はSeedmagazine 2月号に掲載されたJonah Lehrerさんの文書から引用させていただきました。20台の新進気鋭のscienceライターだそうです。今後も応援したいと思います。
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