Friday, March 10, 2006

ヨーロッパ各地で多数のコブハクチョウの死骸が見つかり、検査の結果A(H5N1)型インフルエンザウイルスへの感染が確認された。ドイツ、オーストリア、ハンガリー、イタリア、バルカン半島そしてイランと極めて広範囲のエリアでの発見だけに、感染ルートの特定は簡単には進まないだろう。コブハクチョウだけで感染の拡大が起きているとは考えにくい。ハクチョウは他の鳥類より相対的に感受性が高く、体が大きいこともあって死体の発見が相次いでいるのかもしれない。
 「なぜわずか数週間の間で、大量の白鳥が死んだのか?」と考えると、気候の影響との観測もある。一つの可能性として、「Danube湿原(ルーマニアの黒海沿岸にある世界遺産に登録された白鳥の繁殖地)に強烈な寒気が入り込んだことから、白鳥が西ヨーロッパに飛翔した」というものであるが、コブハクチョウは一日せいぜい100kmしか飛べないので、この説で本件を説明するのは無理がある。もう一つの可能性としては、「西ヨーロッパの各地にはコブハクチョウの周年生息地があり、ここに寒波の影響で他の地域から水鳥が移動してきた」というものもある。「不幸な出会いが疫病の原因になる」ということもあながち的外れでもないのでしょうが、今回の「出会いを演出」するファクターは「寒波」だったのでしょうか? 
 南アフリカにはアフリカ馬疫(AHS)という恐ろしい病気(馬にとって)があるが、この病気は10年~15年の周期で大流行を繰り返してきました。Natureの397,574によれば、この病気、不思議なことにEl Ninoの発生時期に流行することがほぼ確定しています。El Ninoになると海水温が上昇し、アフリカ南東部で雨が降りやすくなります。これにより、AHSウイルスのvectorであるブヨが大量発生し。水と草を求めてやってくるシマウマ等の血を吸い、感染が拡大するというスキームです。
天候条件の変化などがまさに「環境因子」として働くというわけです。
 NYTimes March 6、SlateのExplainer March 8

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