Wednesday, April 19, 2006

免疫学の話をひとつ。四月14日号のScienceに“Evidence for a functional second thymus in mice”という論文がでていた。胸腺は心臓の上にへばり付いたクロワッサンのような形をした臓器というふうに理解されていると思う。ところが、今回、首の副腎の近くにあるリンパ節のような臓器が、機能的な胸腺であるという証拠が提示されたわけだ。
著者の提出したデータとしては、①組織学的な構造、②胸腺特異的な分子の発現、BAL/Cヌードマウスへの移植→T細胞依存性抗原(B型肝炎ウイルス表面抗原)に対する抗体価の測定などであった。
私などにしてみれば、アッソという感じだ。というのも、鳥類(ニワトリ)の胸腺は、もともと頚椎に沿って、複数のlobesが左右対称に並んでいるからだ。でも、T細胞のontogenyの仕事をしている方にとっては、悩ましい論文だろう。胸腺切除によってde novoのTcellの発生を止めるトリックを使った実験データの解釈を見直す必要があるからだ。
科学は今回の件のように、修正されつつ発展するわけで、Don’t mindとしかいえない。
ヒトにもあるの?という話にもなるのかなと思うが、、それは未知の世界だ。
 今回の論文を読むと、「40年ほど前に、マウスの首の切片を観察すると、胸腺に似た臓器があるという報告があった」と書いてあったのだが、出典は”Wistar institute symposium monograph No. 2., V.Defendi, D. Metcalf, eds.( Wistar institute press, )となっていおり、レフェリーに指摘されるまでは、誰も気がつかなかったのではないか。
 論文を執筆するに際してリサーチするのは当然だが、どの程度で止めるかというは悩ましい問題だ。ある特定の機能を担う分子のクローニングを試み、既知の分子に行き着いた場合などは、適当なreviewを呼んで孫引きしたり、vivisimoで探すぐらいが関の山だったりする。そういう意味では、Googleが全出版物を押さえにかかるというのは、使う側からすると大変ありがたいが、それじゃBig brotherの世界だといえば、その通りなわけで…悩ましい。

0 Comments:

Post a Comment

<< Home