Wednesday, April 05, 2006

NOD系統のマウスは人のI型糖尿病に酷似した症状を見せることから、糖尿病のメカニズムを理解する上で貴重なモデル動物である。2003年、ボストンにあるMGHの Denise Faustsmanらは、NODマウスにFCAを投与した後、H2の半不適合の脾細胞を移入すると、ドナーの脾臓に含まれていた幹細胞がβ細胞が分化し、I型糖尿病の症状が改善するとScienceに報告した。幹細胞に関する研究が非常に注目されていた時期でもあり、この論文はかなり注目を浴び、世間的な関心を集めた。Fordの元会長であり、あのマスタングの生みの親でもあるアイアコッカは、I型糖尿病で亡くなった奥さんを思い、自ら100万ドルの寄付を申し出るとともに、治療法の可能性を示すため、100万人の市民に10ドルの寄付を募る声明を発表している。
 Denise FaustmanがFDAの認可は受けたものの、小児糖尿病研究財団などからの、資金の獲得には失敗したからだ。そうした一連の騒ぎを殆ど忘れかけていた今年になって思いがけない論文が発表された。しかも3報の論文が同時にMarch23のScienceに掲載された。
 基本的にはFaustsmanグループの追試なのだが、中には大御所Unanueのグループも含まれていたから、Scienceとしてはこれで決着ということなのだろう。
 結論としては、ドナー由来の脾細胞からβ細胞が分化誘導されることはないということだ。ただ、3つのラボで、ある程度の症状の改善は確認されており、症状が改善したメカニズムは別のところにあるということだ。Tregが利いているのかもという想像もあるが、人の治療となると道のりは遠そうだ。FCA単独投与でもある程度の症状の改善するということから、ヒトにはBCGを打っちゃえというのもあるのだろうが、Nishioらの言うように、BCG療法は12年も前に試みられており、効くのかというとそれほどでもないというのが結論になっている。FCAなんぞは、無茶苦茶、炎症するし、ヒトには使えないし。
となると、阪大様様という話になるのだろうか?

0 Comments:

Post a Comment

<< Home