Sunday, April 02, 2006

 南東アジアにおける生物の多様性に関する調査を実施する目的でラオスに向かった調査団は、市場で売られていたリスに似た見慣れない動物に興味を持った。この奇妙な動物は、石灰岩に穴を掘って暮らす夜行性の動物であり、新種として記載された。まー、ここまでは、良くある話で済むのだが、古生物学者の参入によって、話は膨らんでいった。 今回、 Carnegie Museum of Natural History in PittsburghのMary Dawson らは、ラオスで見つかったリスの仲間が、Diatomyidae族と呼ばれ、1100万年前に絶滅したげっ歯類の祖先の一族ではないかと考え、形態学的特徴を詳細に観察した。両者は歯と顎の形態が良く似ており、下顎の位置はほとんど区別できず、咀嚼動作の共通性を示唆された。また、他のげっ歯類には認められないエナメル質の構造を保持していたことなどから、 Laonastes aenigmamusはDiatomyidaeに属する種であると結論づけられた。
 人間が、調査できる範囲というのは限度があるし、調査に行く理由も地政学的な興味だったりする。そんな人間の事情などお構いなしに、生物は逞しく生きているわけだ。 げっ歯類はどの大陸でも、しぶとく生き永らえてきたグループであり、それぞれ適応のストラテジーがあったりするわけだ。 実験生物学の世界とは、今存在するものだけで、ストーリーを紡ぐものであるが、今回のようなミッシング.リンクが見つかると突然視野が開けたりする。 Laonastes aenigmamusの生態の理解と、genomicsによる、遺伝学的な研究からどのような知見が得られるのか、今から期待しよう。
 Science March 9th

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