Tuesday, February 28, 2006

早老症という病気の一種にHutchinson-Gilford progeria syndrome (HGPS)というのがある。全世界でも50人程度の患者しかいないと考えられている極めて稀な遺伝性の疾患である。この病気および治療に関する研究は現在も精力的に続けられているが、大変興味深い展開をしてきた。
 米国在住の医師LG さんはお子さんがHGPSであると診断されて以来、自ら財団を設立し、議会に働きかけ、HGPSの研究に最高の研究者が携わるようロビー活動を展開した。当時はゲノムプロジェクトに多額の予算がついていたこともあって、NIHのゲノム研究の大ボスのF.Collin'sのLabで原因遺伝子が特定された。彼らの研究により、HGPSの患者さんでは細胞の核膜を作るLaminAという遺伝子に変異があることが明らかになった。たんぱく質は細胞内で加工されることによって、特定の場所に輸送されたり、機能を発揮するわけであるが、HGPSの患者さんではLaminAの分解がうまくいかなくなり、正常Laminが作れず、核膜の構築がうまくいかない。LaminAの分解にはFTとZMPSTE24の二つの酵素が重要であることから、試験管内でそれぞれの酵素を抑制する実験がその後行われた。
 癌の進行にもFTの関与が示されており、FTの抑制剤(FTI)が既に開発されていたのは幸運であった。FTIは抗がん剤としてはまったく期待はずれであったが、ほとんど副作用がないことから、HGPSの治療薬として期待が高まるところである。FTIは核膜の構造をrestoreすることが報告されているが、HGPSの患者さんは心臓発作で亡くなることから、治療効果に関するデータが揃うのはもうしばらく先になるのかもしれない。
 Scienceとして興味深いのは細胞の運動やシグナルトランスダクションに重要なRasがきわめてオオソドックスな細胞骨格分子Laminと同じ酵素の基質になるところである。ある種のたんぱく質は同じのりを使って核膜にくっつくのだ!
 製薬会社は世界で50人の患者さんしかいない病気のために薬の開発はしないだろうから、こうしたプロジェクトにおいてよい治療法が開発されるとしたら、みんな勇気づけられる。少なくと既に原因は突き止められたのだから。

Monday, February 27, 2006

 トリノオリンピックの閉会式はとてもゴージャスだったようですが、ワインやシャンパンをやりながら月曜日に備えていた方も多かったのではないでしょうか?Mike SteinbergerがイタリアそれもPiedmont州のとっておきのワインについて書いていたコラムが面白かったので私なりに書いてみます。
 Piedmontのワインといえば、Barolos、Barbarescosが著名ですが、シルキーで力強いタンニンが口の中で広ります。銘柄については個人の趣味もありますのでパスしますが、Nebbiolo種の特徴を色濃く反映しているのですねー。
Nebbioloの果皮は厚くタニンが豊富ですが、成熟が遅いのが玉に瑕で、昔は10月になってようやく収穫していたとのことです。この時期になるとトリノの南側の山間地では濃い霧(Nebbia)が立ち込めることから、この品種名が固定化されたようです。(そういえば日本の蕎麦の品種に「霧の下」てのもありますね。) 10月の北イタリアは結構寒いですし、日の出は遅いので、収穫のタイミングが難しいと思いますね。もちろんその後のプロセスもですが。
 マニアの特権ということなのか、Mikeは日本の若い方も知っているスプマンテのAstiのアペラシオンでこれまであまり見向きもされなかったBarberaの栽培に挑戦する人々がでてきていることに注目しています。収穫量をreduceするとか、Caskで寝かせるか、barriqueで寝かせるとか、保守派、進歩派それぞれに様々な取り組みがあるようですが、スーパータスカンがめったに手に入らない状況が続き、Piedmont州のワインの需要も旺盛になっているとのことですから、しばらくは注目したいですね。Mikeがどのワインをchoiceしているかは皆さんご自身で確認下さい。Slateにあります。
 土曜日、馴染みのItalia料理店に行きましたがそこで、出されたトリノオリンピック記念のメニューは本当に絶品でした。ご馳走様でした。

Sunday, February 26, 2006

オリンピックが終わると春はすぐそこですね。
フィギュアスケートの女子選手の活躍にはいろいろ考えさせられるものがありますね。ここ数年の不況の影響から多くのスケートリンクが潰れており、わが国のトップレベルの選手ですら、練習場の確保すらままならない状況とのことです。日本の女子選手に今後とも活躍してもらうためには施設の確保が急務とはお寒い話です。
地方自治体の箱物行政はいけないということですし、企業は社会的貢献という前に利益をださないと厳しいわけで、「じゃー、何が出来るの?」と考えると「プロ化」、「総合スポーツクラブ」、「競技間の対立から協調へ」というのが流れでしょうね。 ただ、落ちるところまで落ちないと踏ん切りがつかないのが日本の現実です。バスケットボール界の動きに注目したいですね。