Friday, March 31, 2006

BBC newsのサイトを見ていたら、IFDC(国際肥料開発センター)による調査結果が目についた。 サハラ以南のアフリカでは、80%の耕地が土壌侵食に悩まされているという。人口の増加に伴い急激な農地の開発が続き、土壌の養分が失われている。肥料の購入が困難なことや、森林の伐採の影響も見逃せない。アフリカでは60%以上の人々が農業に従事しいるのにもかかわらず、作物の生産量は拡大していない。一方アジアでは、この40年間に収穫量は3倍に拡大している。人口増加に対応するため、農民は連作につぐ連作を行い、土壌をさらに劣化させている。2002-2004の間には、85%の耕地は1ヘクタール当たりの収量30Kg減少し、このうちの40%については減収は60kgに迫ろうとしている。
BBCは肥料と貧困をなんとかせーとまとめているが、JICAの調査報告書を読むと、事情はもっと複雑だということがわかる。詳しくは君島崇氏のお書きになったものを探していただきたい。 
要点としては、①アフリカ大陸の地質学的な年代の古さに起因する、土壌の低肥沃度の問題。 ②火山活動の影響による、Naの蓄積 ③雨季をもたらすITCZの南北移動収束が降雨の主因であり、移動に規則性がないため、計画的な耕作が困難だということだ。
 これらがアフリカにおける、農業の発展を阻害している要素であることを認識しなけらばならない。単純に施肥量を増やすだけでは、持続可能な農業の発展は難しいのだろう。アジアや南米、コーカサスの作物を持ち込んでもそれらが上手くいくとは限らない。やはり教育が重要ということだ。
                                 J Diamondの仮説を思い出す。

Thursday, March 30, 2006

ここしばらく風の強い日が続いている。桜の花も酔客に囲まれるのを快く思っていないのだろうか? ブルーシートと桜じゃ、歩兵と王女様のようで不釣りあいだし、場所の取り合いのために鋲まで持ち出すとなると、もはや救いがたい。 桜を愛でるなら暖色系の照明が仄かに灯るくらいがいい。夜風にゆれる提灯と黒い水面に反射するオレンジの光があれば、パーフェクトだ。あるいは、朝の3~4時に起き出し、山まで車を飛ばし、霧に佇む老木の下を歩くのも楽しいものだ。
 これからの時期、桜を先頭にして様々な花の開花が始まるが、チューリップとラッパスイセンは和風とも洋風ともいいづらい独特の位置づけにあるような気がする。 チューリップは明らかにシンプルでバタ臭い花だが、幼稚園など子供のいる風景には必ずあるもので、馴染み深い。もちろんチューリップはオランダの代表的な輸出産品だが、日本でも富山県や新潟県でも大規模に栽培されている。ゴールデンウイークなどになると行楽客の多くは高速道路を通行中に畑一面に咲き乱れる風景を目にし、子供の泣き喚く声にも我慢が出来る。 
 知らなかったのだが、チューリップの原産地はトルコの東部だという。この地の冬は厳しく、湿潤な上に夏季は暑く、乾燥する。 だから、球根をつくり、夏場は我慢するわけだ。北米や日本などでは夏の暑さは変わらないが、夏場は湿潤なので腐ることもしばしばだ。 オランダなどでは開花した後はすぐに球根を引き抜き、夏の旱魃を模した状況におくことで、来年の開花の準備とする。さらに秋に、
選別作業を行い、小さいものは埋め戻し、大きいものだけが売り出される。ホームセンターなどに行ってみると、チューリップの球根は大変安価に取引されているので、殆どの人は毎年毎年球根を買うなのだろう。ただ、あまり手のかからないチューリップだからこそ、手塩にかけてみたいと思う人もいるだろう。 チューリップを何年に渡って咲かせる実験も楽しいのではないだろうか。夏場の地中海沿岸地方を模して、圃場に一切散水なければうまくいくかもしれない。そんなのできるわけないじゃんといわないで欲しい。もし、チューリップがなにより好きならば。 Tulipa Hageri, "little beauty"なる品種の写真を見たが、日本でも入手できるのであろうか?是非欲しい。
                                              Slate March 28

Wednesday, March 29, 2006

Stanislaw Lemが亡くなった。ポーランドに生まれた彼の生涯と作品については、驚くほどの誤解と決め付けによって歪められているところがある。 本人による翻訳や批評についてのコメントをみると、私達が知っている彼の作品がどの程度原型に近いのかさえ分からない。ドイツおよびフランス人の翻訳については、本人もある程度納得しているようだが、英語版についてはどうも芳しくない位置づけにあるようだ。 酷いものになると、ソラリスの海洋はUSSRで衛星の住人達は、ソ連の衛星国という解釈になるそうで、こうした投影に何を期待しろというのだろうか?genere criticsとはその程度のものだ。 SolarisについてのTarkovskyとLemの見解はまったく相容れないものがあり、Lemは二人の立場を”Two horses dragging the same cart in defferent directions"とも述べている。Lemにしてみれば、TarkovskyはSolarisではなく罪と罰を撮ったということになる。 映画ではなく小説をこの機会に読んでみましょう。
 意外な観点だが、Lem本人もいっているように、ある意味Faulknerに似ているところがある。

Tuesday, March 28, 2006

 日本の現状では一寸考えられないが、栄養科学的な観点からブタのクローニングを試みる研究者がいる。ブタのクローニングの名人として知られる Missouri大学のRandall S. Pratherと HarveardのJing X. Kangのグループは、哺乳類が体内で作ることの出来ないomega-3 fatty acids(DHA, EPA および ALA)を体内で作らせることに成功した。 日本人だと、魚を食うからいいじゃねーかとも思うが、欧米人は水銀の一日最大摂取許容量にシビアだし、誰もが魚好きとはいかない。ある程度需要も期待できると思うのだろうな。 一連の実験では一寸twistyな展開があったようだ。、まず、HarvardのMGHのグループがマウスで、線虫の酵素を改変したトランスジェニックをつくり。第3の共同研究者である、ピッツバーク大学のYifan Daiがブタの細胞にハーバードのコンストラクトをトランスフェクトし、Pratherとの共同研究を始めた。Pratherは一般的なクローニング法によぅてトランスジェニックPigを誕生しさせた。Heterozygousのブタが生まれたので、これから系統造成をするわけで、プラクティカルな仕事はこれからだ。
 最も、「そんなもの食うより、Jamon Ibericoがあるじゃん」とは言ってはいけません。彼らはマジなんですから。ちなみに、Jamon Ibericoが米国に輸入が認められたのなんとつい昨年のことだそうです。下手に味を覚えられると困るのですがネー。
 モチブタも大変美味ですよ、これはかなりお勧めです。
NY times
NPR

Monday, March 27, 2006

カトリーナで散々な目にあったフロリダ州は、金持ちが老後を過ごす場所と相場が決まっているが、歴史的な点でも興味深い地域である。
スペイン人が最初にPesacolaに入植したのは16世紀の中期と考えられているが、その後100年ほど捨て置かれた。1719年に勢力を拡大しつつあったフランス人がこの地に進出したが、三年後にはスペインに譲渡された。周期的に訪れるハリーケーンは当時の荒くれ者達を悩ませ、場合によっては恐怖のどん底に突き落としたことだろう。西インド諸島や南米こそが覇権を賭けた主戦場であったわけだが、当時のフロリダやルイジアナの置かれた状況によって、その後のアメリカの多様性が形成されたという側面もある。
台風Ivanによって壊されたプールの再建工事の現場で、15世紀から17世紀(16世紀が有力か)に難破したと思われるスペイン船の残骸がこの度見つかった。地下23mの砂の中で発見されたということだが、プールが海軍の海難・保護訓練用の施設というのはあまりに皮肉ではないか。掘り起こされた残骸からタイルやロープやオリーブの壷が見つかったというが、 この船の正確な年代は分かっていないが15-17世紀のものとみられる。
 ポルトガル人フランシスコ・ゼイモトが中国船に便乗して種子島に来たのは1543年の八月であったが、台風銀座に位置する種子島に流れ着いたのは偶然ではなかった。彼らの乗った明国船は広州を出発したものの台風に遭遇し、琉球列島を北上したが、上陸を拒まれ、種子島南端門倉岬に漂着したのである。
 種子島時堯はポルトガル人を厚遇し、key technologyの獲得に成功したが、これが30年後の信長の長篠の戦いの勝利に繋がるとは想像すらできなかぅただろう。
 打ち捨てられたスペイン船はアメリカ大陸に何をもたらしたのだろうか?
AP 通信のニュースより

Sunday, March 26, 2006

H5N1型のインフルエンザがpandemicを起こすか?ということになると、「人事を尽くして天命を待つ」ということになるのだろうが、南東アジアにおいてはすでに風土病となっており、中近東の家禽に定着しているVirusとの遺伝子変換がどの程度の頻度で起こるかというのは大きな要素になるのだろう。
 Natureのコレスポンデンスの論文は、ある意味心強いものがあったが、だからといって準備が不要という意味ではない。 航空業界がグローバルなアライアンスを組み、HUB空港においてトランジットを重ねる人が多いということは、インフルエンザの対策が厄介になっているということだ。CanadaでSARSの鎮圧に手を焼いたのは、ついこの間のことだが、潜伏期間が短いインフルエンザの場合、トレイスバックや隔離といった古典的な対策の効果は限定的だろう。だから、「備蓄」だよとなるのだろうが、それにしても、わが国では安易に伝家の宝刀を抜きすぎるているのではないのかなー。薬を使うという事はそれだけ、選択圧をかけるわけで... 1918年のpanndemicsの影響を受けなかった国といえば、まず最初に思いだされるのはアセアニアであるが、カモなどの水禽動物のマイグレーションがほとんど無かったことが効いていた。 今回は、南東アジアがあぶないということで、対策をという流れになっている。 NZでは、国の象徴であるキウイやKakapoの保護対策としてワクチネーションをするらしい。Kakapoは現在86頭しか生き残っていないということで、とりあえずやっとこうというところなのだろう。 どのようなワクチンを使うのか?ワクチンの安全性をどうやって評価するのか?興味深い。
CBS News
Nature

Friday, March 24, 2006

「陰謀論」と「宝探し」それから「単純なキャラクター」がDan Brownの三種の神器だ。一気に読ます仕掛けを用意して、24時間以内に決着をつける。ここまで揃えば、首尾は上々だ。
 読者は、馬鹿馬鹿しいと思いつつ、そのまま読んじゃう。最高のpulpe fiction writerじゃないか。
 今朝、Slateに出ていたBryan Curtisのエッセイを読んで、大笑いさせてもらったのだが、Brownが金脈を掘り当てるまでの経緯は一寸面白かった。
 小学校で型どおり、Faukner、Steinbeck、Dostoyevsky、Shakespeareを読まされたものの、小説というものにはまったく手をだしたことがなかった彼が、タヒチにバカンスに行った時、たまたま読んだSidney Sheldonの「陰謀の日」に天啓を受けたらしい。彼は「Sheldonに比べればShakespeareは勿体ぶっていて、とろい」と感じたようで、俺もいつかこんな小説が書けるのだろうかと思い始めたという。
「うーん、そんな風に思える人が世の中にはいるんだ!」とあきれてしまうが、彼はそういう人らしい。それで、所謂、Dan Brown thrillerを成功させるためのストラテジーを練ったわけだ。冒頭の三種の神器だ。都合のいいプロットをでっち上げ、主人公をその通り動かし、スピードで煙に巻くわけだ。それできちんと成立するところが、Brownの真骨頂なのだろう。
 彼の主人公の名前の付け方は、ガイジンガイジンした名前か、ものすごく凡庸な名前のどっちかだというCurtisが指摘は笑ったが、Robert Langdonという名前がBrownのお気に入りで、「苗字がtwo syllableなのがとっても“New England”ぽいでしょ」とか言っているらしい。
   とほほ...
 Slate March 22 Dan Brown code

Dan Brownを冷やかしているエッセイとして、2005June 21のSlateのConspiracy Theoriesがあり。Hitchens大人気ないぞというものです。こちらもぜひ一読を。

Thursday, March 23, 2006

Tel Avivから一時間半ほど南下するとNegev砂漠の端っこ出る、ここはイスラエルとパレスチナの地政学的な関係を知るには最適な場所だ。目の前には地中海が広がり、ここだけが安全な国境線であり、左はGaza、ど真ん中にはしばらく前まで入植者の住んでいた緩衝地帯、右には発電所が見えAshkelonに電力を供給している。そしてかなり後ろにはAriel Sharonの私有地が広がり、直近の町がSderotである。ここはGazaに最も近いイスラエルの町で、二年前にはGazaから発射されたロケット砲によってEthiopia系の子供が殺される事件が起きている。 この町には2人のカリスマ的存在がいる。Histadrut(イスラエル貿易組合)のheadを勤め、Shimon Peresを追い落とし,労働党の党首になったAmir Peretzと市長のEli Moyalである。この町は、1951年に新たな移民のためのテント村として誕生し、現在ではいかがわしい開発地域の烙印を押されている。大雑把にいうと、人口16,500人の半分はモロッコ系住民で、半分を少しばかり下回る住民が最近移民してきたロシア系で、残りがエチオピア系だ。Likud系の市長は「ここには全てのカタストロフが揃っている」と述べている。モロッコでガソリンスタンドの倅として生まれたPeretzと聖職者の息子として生まれたMoyalは多くのモロッコ系住民の例に漏れず、Ashkenzazi 系住民の差別と戦いながらこの地で育った。Peretzはイスラエル政界において常識とされる、国防第一の政策を引っ込め、2年間の間に、子供を貧困から救うと表明した。全くのポピュリストだとの評価もあるが、「ブラフに決まっているさ。彼だったら、Peresなんかより強硬な態度を取るに決まっている。だって彼はモロッコ人だぜ」という市民もいる。モロッコ系の住民はイスラエル社会で孤立し、ブラックパンサー党を結成し、市民権の拡充を求め階級闘争を繰り広げた。これを外側から見ていたパレスチナ人のEdward Saidはパレスチナ建国における同調者とさえ位置づけていた時期もある。だが、Sephardi(non-European Jew)のメンタリティーは複雑だ。大多数のモスリムに囲まれ何世紀も過ごしてきた彼らの祖先には、政治力などなく、何も言えず、政治に関与することなどユダヤ教の教えに反することであった。彼らの生存空間は正にゲットーであったわけだ。それゆえ、Sephardiはアラブ人の習慣や性向を良く理解しており、そこから逃げ出したわけだ。ロシア系住民も、ロシア兵としてチェチェン、アゼルバイジャンでモスリムと戦い、この地にたどり着いた。
 ユダヤ人には夢見る能力が欠如しているというが、キブツはユダヤ人の相互扶助主義を具現化する理想郷であったはずで、ロシアの共産主義的にも影響を与えた。Sharonは入植地を打ち捨て、パレスチナとの壁を築き、拡大主義と一線を画したが、イスラエル国内における地殻変動も放置しがたい状況にあったことは間違いない。今後、Kadimaが国民の求心力を掴むのか、Netanyahuが巻き返すのか、それとも労働党が信任を得るのか、不透明な情勢である。しかしHamasが相手となると、それほど態度が変わるはずがない。こうした情勢が続いた場合、不満を募らすのはSephardiだけではないのだろう。とても理想的とも思えない国家へと、向かわざるを得ない人がいることを、心の隅にでも置いておこう。
Gardian March 22
Amir Peretzは

Tuesday, March 21, 2006

川崎の信じられない走塁と、西岡のプッシュバントは野球という競技の深遠な魅力を示してくれた。最もこういうプレイが出るためにはそれなりの舞台が準備されなければならなかったのであって、そこには「静寂」と「拍手」があった。静寂は競技者の集中力を高めると同時に、無言の圧力となった。松中に四球を与えた投手には、容赦の無いブーイングが浴びせられ、次の打者への投球に際しては。自ずと力が入ったのだろう。 モメンタムとは恐ろしいもので、相対する一方がチャンスを潰すと、他方に必ずといっていい程チャンスが訪れる。八回のキューバは既にノーチャンスにみえたが、レフトの上空を破ったホームランで球場全体の空気が変わり、反攻の狼煙が上がったかに思えた。 ところが、誰もが予想し得なかった瞬間が訪れた。王監督が今シーズンからレンジャーズに移籍する大塚をマウンドに送り出したのだ。大塚にとってサンディエゴは暫く前までのホームグラウンドで、球場サイドが用意した彼のテーマソングが演奏されるとサンジエゴの観客は一瞬にして、大塚個人に対する守護者となった。このイニングを無事乗り越えることが出来たことで、9回の攻撃が引き出されたと考えていいだろう。大塚が日本を飛び出したものの、サンジエゴで鳴かず飛ばずであったら、観客の声援はなかったはずで、大塚を選んだ王監督の引きの強さを感じた。 最高のフィナーレを迎えたWBCであるが、今後野球選手の最高の舞台として定着するかどうかは、まだわからない。MLBはある意味チャンピオンリーグみたいなもので、ワールドカップよりチャンピオンリーグだぜという主張もそれなりに説得力があるからだ。ただ、私個人は、Jsportsでやっているアルゼンチンリーグなどを観て、全く違うtasteを感じて、やはり世界は広いし、奥深いなと思う人間である。今後のWBCの行方は観客の判断に委ねるしかないのかなとも思う。根本的な問題として、アメリカ以外で開催が可能かという問題があるが、仮に日本で開催するとしたら、日本人はそれなりの金を払う覚悟をしなければならない。 兎も角、ソフトバンク対ロッテの試合を見に行く人がどの程度増えるか、フォローしたい。交流戦が去年から始まったことがここで効いてくるといいのだが...。

Monday, March 20, 2006

グラナダが陥落して、スペインのレコンキスタが完了した年に、コロンブスは西インド諸島に降り立った。同じころ日本では堀越公方が滅亡し、1495年には北条早雲が小田原城を奪取している。今から20世代くらい前の話だ。私の両親にもそれぞれ両親がいて、その両親にもと次々数えていくと、1495年当時には、大体60万人から100万人の祖先がいた計算になる。
 さらに遡って40世代前となると、紀元1000年ぐらいになるのだろうか?となると藤原道長が活躍し、紫式部の源氏物語を書いていた時期なるのだな。祖先の数となると軽く見積もっても、たぶん何千万人から数億人程度にまで拡大することになり、こうなると全ての人には、アジア、アフリカ、ヨーロッパに住んでいた祖先がいることになる。また、おそらく、ヨーロッパやアフリカの人々にさえアメリカ大陸にかつて住んでいた祖先がいたことになる。
 で120世代前となると、現在の生きている人々の共通祖先は当時生きていた全人類とほぼ同じ数になってしまう。どのようなインターコースを辿ったかは別にしての話だけれどね。
 環境的あるいは社会政治的に日本人的な集団がこの細長い列島に閉じ込められていたのは比較的短い間だったのだろうし、日本に住み着くに至った経路はもっともっとダイナミックものがあったのだろうから、日本人の起源といっても…。一方、これからどうなるのかと考えると、 たぶん同じ事を繰り返すだけの話なのだろう。
人種というのは、ある意味偏見であって、形態だとか、肌の色だとかという表現型は、比較的少ない遺伝子のコンビネーションによって規定されるものだ。それこそトランプ占いのようにめくる度に変わってしまうものなのだろう。ちょっと前のエントリーでも言ったようにネ。

Slate:3/15日Why We’re All Jesus’ Children
Nature 2004, 431 518-9: Modeling the recent common ancestry of all living humans.

Sunday, March 19, 2006

世の東西を問わず、食べ物に関する倫理というのは悩ましい問題だ。アメリカにも大きな有機食品店がタイムススクエアの傍に出店するなどして、注目されている。WF社の社長は、社員に対して最低時給13.15ドルを保障し、法外な役員報酬は支給しない方針だという。社長の年収も342,000ドルと押さえ気味というが、日本の報酬水準と比較すると安いかどうかは微妙なところだ。この店では、チリ産の有機栽培のトマトが他の店で見かけるNJ産の普通のトマトより高値で取引されていたりする。 
 アメリカでは、「everyday low price」のフレーズで有名な某店のように、価格こそ競争という局面が確かにあり、業界の寡占化が進行している。こうなると、他の業者は価格を武器に競争を挑めないから、「環境にコンシャスです」というのは一つの売りになる。世の中、矛盾はつきものであり、彼らにもアキレス腱がある。 有機野菜といったら消費者は家族経営の農家を思い浮かべるのだろうが、実際のところ米国の有機野菜の生産も既に寡占化が進み、カルフォルニア州の5社ないし6社がシェアの大半を握っているという。 
 さて日本であるが、今年から「集落営農」制度がいつのまにか導入された。戦後の農業を支えてきた人々の高齢化が進み、あと10年したら、おそらく農業を生業とする人口は三割は減る。ヒトの数は票の数であり、金の流れも細くなるのだろうか? そうすると、農林水産省の名称は残るにしても、イギリスのようにMinistry of rural affairになっちゃうかもしれない。後は。環境庁と厚労省とまたがっている部門の統廃合が待ち受ける。
 結局のところ、食べ物の安全と安心は別次元の問題であり、「安心」について真剣に議論したかったら冷凍食品、加工食品、外食をsaveすることだ。少し絶望的な気分になる。
Is Whole Foods Wholesome? slate

Thursday, March 16, 2006

イギリスでWaltham Parexel Internationによる治験で21歳大学が亡くなった他、薬の投与を受けた他の5人も重篤な症状を呈しているとのことだ。 Parexelが請け負った治験はドイツのTeGenero AGが開発した薬で、慢性Bリンパ球性白血病およびリューマチの治療薬であり、開発コードはTGN1412とされていた。ちょっと調べてみるとこの薬は所謂抗体薬であり、CD28に対するヒト型のモノクローナル抗体薬であった。 CD28はB7とペアをなすTリンパ球の共役型シグナル分子であり、この分子の信号伝達系については既によく知られている。Tリンパ球の信号伝達系は恐ろしく複雑で、主要なリセプターと、会合するシグナル分子、補助分子、チロシンキナーゼ、アダプター分子、ホスファターゼ、C-キナーゼ、MAPキーナーゼ等等で構成され、これらの分子のキャスケードが正しい序列で活性化あるいは抑制されることで、ホメオステシスが保たれる。 CD28は抗原提示細胞の表面にあるB7分子と会合し、細胞内に情報を伝えているが、人為的にCD28の細胞外の部位を特殊な抗体で架橋すると、無軌道な暴走なしにT細胞を活性化出来るという報告がある。 この実験モデルは、ドイツのWurzburg大学のグループなどが取り組んできが、かなり巧妙な方法だと認識されてきた。しかし、BBC newsやBoston heraldの記事を読む限り、明らかに多臓器不全が疑われ、おそらくサイトカインストームが起きているのだろう。 今のところ想像しかできないが、CD28はもともと、TcRやCD3などとともに細胞表面にいる分子であり、高濃度で投与した場合などには、短時間に細胞表面をベタベタにさせ、様々なスウィッチをたたく可能性もある。この推論が正しいかどうかは今のところ確証はない。
 昨年にはNature Immunologyに、ヒトCD28の結晶解析の論文がでているので、TGN1412がCD28のどこに結合するのかは、専門家であれば予測はできる。 
今回の事件はMolecular Immunologyをやっているヒトにはかなりショッキングな出来事だ。これまで、サイトカインの製品化など比較的サクセスストーリが続き、抗体薬もpromissingだと思われていたのだから。これからしばらくは、実験免疫学と臨床免疫学の対話によってリアリティーを追求していくしかないのかと思う。免疫学は既に枯れた学問だというヒトが多いが、いまだに分からないことが多い。Tregの話じゃないけど、これからもいくつものパラダイムシフトが待ち受けているのだろう。 ヒトの末梢や臓器には少量のリンパ球が常在しているし、イマージェンシーの時には、今まで見たこともない細胞集団が突然出てきたりする。未だに組織学と細胞免疫学が重要だということだろう。もちろんexpression profilingが重要なのは言うまでもない。

細胞分化のチェツクポイントがあまくなったりした場合などにおいては、シグナル分子のネットワークにもplasticityが生じても不思議ではないと思う。
BBCnews 
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgicmd=Retrieve&db=PubMed&dopt=Abstract&list_uids=15696168

グリンスパンの回顧録のギャンティーは10億円だという。日本の出版社では簡単には手が出せないところがほとんだろうが、面子ということもあり、日経が翻訳を出すんだろうな。でもダイヤモンドあるいは東洋経済もペンギンとの交渉に手を上げる可能性はあるよね、きっと...。
 TVなどでは、彼がくしゃくしゃのコートを羽織り、使い古したBAGを手にFEDに入っていく姿がしばしば映し出されるが、議会証言がそのままTVに流されることはほとんどないから、彼の発言についての解説だけがメディアに垂れ流されてきた。
 彼の物言いは”Oracular obscurity"と表現され、恐ろしく慎重でかつ巧妙な物言いをすることから、しばしば何を言っているか分からないと揶揄される。こうした批判に対して、「君らには警告する必要があるのかなと思うが、私が単純明快な人物だとすれば、君らはたぶん私の言ったことを誤解するだろう。」と反論している。
 これまでの彼の発言は全て仕事と立場をわきまえてのものであり、autobiographyでは少しはサービス精神が発揮されるのであろうか?これまでと変わらない慎重な言葉選びが展開されたとしたら、読書にカタルシスを期待する人々はいらいらするのかなとも思う。 統計オタクとされるグリンスパンも実は、Juilliardでクラリネットを学び、サクソフォンの腕前は折り紙つきなのであって、著書では横道にそれてくれることも期待したい。
 1996年のAEIでのスピーチでは“irrational exberance and unduly escalating stock prices”という有名な言葉を使ったがのだが、マーケット関係者は一瞬にして凍りつき、東京市場は、一日で3.2%も下げたのはもはや伝説である。当時のインターネット環境では、ストリーミングなど存在せず、グリンスパンの言わんとするところがどれほど正確にヒトに理解されたかは疑問がある。無論、12チャンネルの朝のニュースを見ていた人は沢山いたのだろうけれどネ。マーケットには時たま脊髄反射のようなものが起こり、「これは何かとっても大事な警告だ。逃げろ」という反応もあったのではないかな?
 本が世にでるのは早くても来年九月とのことで、今のところrunning titleは、‘Is Your Money Supply Expanding, あるいは Are You Just Happy To See Me?とされている。マジカヨであるが、これから一年以上も待たされるか?やれやれ。
                        Slate Michael Kinsley

Wednesday, March 15, 2006

1945年8月15日が何の日か知らない人はいまい。天皇の玉音放送を聞き,様々な思いが去来したはずであり、外地で暮らしていた民間人にとっては地獄の始まりだった。一方、米国では日本側の対応を待ちわびていた人々がいたが、歴史は時に気まぐれな表情をみせる。 そんな歴史の一こまが、4月1日および2日に開催されるフィラデルフィア・フィルム・フェスティバルにおいて公開されるという。 ”The Messenger”と題された短編ドキュメンタリーは、日本の無条件降伏の電報を運んだ16歳の少年の忘れられないエピソードについての作品だという。 監督のQuincy PerkinsはDavid McCulloughの大著”Truman”の461Pの最後のセンテンスにインスパイヤされて映画化を思い立ったという。主人公であるThomas E.Jonesは1945年8月14日、当時16歳で、Washington D.C.で電報配達をしていた。日本のアメリカへの降伏を伝える電報をホワイトハウスに託された彼であったが、荷物の重要性に気づくことなく、その日、仕事を放り出し晩飯のパンケーキを食べ、友達とウエイトレスにちょっかいをだしていたという。Tomは違法なUターンをし、警察官に咎められたことから、パーーケーキの皿を残し、ホワイトハウスに向かったのだという。 Jones氏はその後、朝鮮戦争に徴用され、結婚し、ペンシルバニアの鉄鋼会社の営業として働き、昨年12月31日に病気により他界したいうが、監督のPerkinは16分の映画の中で、貴重なインタビューを収録することに成功した。 Johns氏が大統領に手紙を手渡したところ、トルーマンは少年に”What do you have for me?といい、中身を確認しながら少年の頭を撫で、”It's good news. It's really good news"と語ったという。 かつてNBAの76ersの会長を務め、現在Key Westにある海賊博物館のオーナーであるPat Croceが資金の提供と製作総指揮にあたったという。
 戦争の悲惨さなど当事者でなければ分からないことが多いといことだろう。ましてや人の痛みなど想像すらできないのが真実ということか?クリントイーストウッドは、硫黄島についての映画を撮り、今年中に公開するというが、果たしてどのような作品になるのか興味深い。
                                   USA today 3/13

Tuesday, March 14, 2006

染色体の位置と遺伝子の進化速度には一定の関係があるとの観察があり、これを説明するモデルが幾つか提示されてきた。Biaced gene conversion モデルによれば、局所的な組み換えの起こる確率はGCコンテンツとランダムな突然変異(中立進化)の両者の影響を受け、新たな組み替えによって突然変異がさらに誘発され、GC比は上昇する方向に向かうのではないかとのアイデアも提唱されている。このモデルの検証にイヌのゲノムシーケンスが活用された。

 哺乳類の共通祖先(CAE)から、イヌへの分岐の過程で染色体はすさまじい構造の変化が認められる。イヌでは小さな染色体が多数有り、セントロメア近傍での逆位と染色体同士のセントロメアによる接合が起こったと考えられている。
 一方、ヒトのサブテロメア領域はG/C比(GC4D9や突然変異の生じる確率(Ks値)が明らかに高く、イヌ、マウス、ラットなどよりこの傾向が顕著だという。ヒトのサブテロメア領域では組み換えが起りにくく、GC比は高いが、イヌ、マウス、ラットではサブテロメアにおける組み換えの頻度が高い。
 BGC説によれば、ヒトでは染色体のサブテロメア領域のGC比は高く、組み換えが起こりやすいと解釈される。組み換えが起こると遺伝子変換とともに、ミスマッチの修復がなされ、GおよびCの塩基が挿入される確率は高くなる。これによりGC比は上昇し、さらに突然変異の確率が上昇すると予想される(疑問も呈されているが)。今回の研究ではBGCモデルに否定的なデータが提示された。ヒトの染色体は、想定されるCAEの原初的な構造が維持されいるが、イヌではかなり変化しているため、ヒトのサブテロメア領域のGC比は、イヌの同一領域より高いはずである。確かにその傾向はあるものの、組み替えが起りにくいセントロメア周辺とあまり変わらない比率でしかなかった。BGC説によれば、GC4Dの値はひととイヌの同一領域で変化し、組み換え率も異なるはずであるが、ヒトとイヌではGC4Dの値はあまり変わらない。むしろ遺伝子領域におけるのGC4Dの値は、極めて古い時代に定まったものと考えられる。従って、ヒトのサブテロメアのGC比が高いのは、どの染色体といわず、哺乳類の共通祖先あるいはそれの祖先から受け継いだものと考えられる。41個の遺伝子を選び検証すると、コドンの3番目の塩基のGCの比はヒトでは2.3%しか増えないし、イヌでも2.1%と際立って上昇しているわけではなかった。即ち、突然変異の蓄積と染色体のキネトコア構造はあまり関係がないのかもしれない。 
 Oxfordの連中の提唱する説は、G/C比が高い領域では染色体の接合も起こりやすく、接合を繰り返すことによって、G/C比の高い領域が結果的にテロメア側に移動して行くとするモデルである。 このモデルでは、新たに出来たテロメアもGC比が高いところで染色体の接合が起こる。セントロメアも染色体同士の接合により形成されうると考えられ、セントロメア側でもGC比は高くなる。更にセントロメアとテロメアの逆位が起こるというものである。 
 このモデルはあくまでも、イヌとヒトの比較においての議論であり、一般化できるかは疑問がある。むしろ、霊長類の染色体がなぜコンサバティブなのかに興味がある。また、染色体の組み換えが高頻度で発生するホットスポットは生殖細胞系列に特異的な動作スイッチをもっているのであろうか?
GenomeResearch2005 December 

Sunday, March 12, 2006

「結局のところ男には犬以上に信頼のおける友などいないのさ」とイギリス人は嘯くが、「ブルータスお前もか(Et tu, Brute?)という台詞書いた作家は「運命よ、おまえの意志は人間には知るすべもない。人間いずれは死ぬ、それは知っている、問題はいつ死が訪れるかだ。」とも述べており、英国人は日本人に劣らず「人生の儚さ」に自覚的なのかもしれませんね。 ヒトの友達がイヌだとしたら、イヌにとっての友達はどのへんなんでしょうね?少なくとも遺伝的にはオオカミが、そしてその次にコヨーテ、ゴールデン.ジャッカルがというデータがありますが、更にさかのぼると、黄色ジャッカル、キツネやミンクが一族に名を連ねることになります。 分子進化の研究によれば、ヒトとイヌの分岐年代は95Myと推定されていますが、ヒトの染色体が46対であるのに対してイヌの染色体は78対であり、顕微鏡で観ると鳥類のように細かい豆粒のように見えます。 哺乳類においてこれほど染色体数が多い動物は珍しく、標準核型の作製すら困難を極めました。染色体特異的ペインティングプローブを利用しての染色体地図の作製に目鼻がついたのも97年ごろだったと記憶しています。 イヌがモデル動物として世間的な感心を呼んだのは、ナルコプシーの原因遺伝子がポジショニングクローニングされてからだと思いますが、①表現型の多様性、②比較的小さいコロニーから作出された系統が得られること、③ヒトの疾患のアナロジーと考えられる遺伝性の症状が記載されていることなどから、ジェノミックスとしてもアプリケーションの点からもオモロイと認識され、ゲノムシーケンスの決定(ただしドラフト)に漕ぎ付けたのでした。 NIHにはこういうクレバーなヒトがいるのですよ。Stephen J. O'BrienとかNancy Jenkinsとかネ。
明日に続きます.... 

Friday, March 10, 2006

ヨーロッパ各地で多数のコブハクチョウの死骸が見つかり、検査の結果A(H5N1)型インフルエンザウイルスへの感染が確認された。ドイツ、オーストリア、ハンガリー、イタリア、バルカン半島そしてイランと極めて広範囲のエリアでの発見だけに、感染ルートの特定は簡単には進まないだろう。コブハクチョウだけで感染の拡大が起きているとは考えにくい。ハクチョウは他の鳥類より相対的に感受性が高く、体が大きいこともあって死体の発見が相次いでいるのかもしれない。
 「なぜわずか数週間の間で、大量の白鳥が死んだのか?」と考えると、気候の影響との観測もある。一つの可能性として、「Danube湿原(ルーマニアの黒海沿岸にある世界遺産に登録された白鳥の繁殖地)に強烈な寒気が入り込んだことから、白鳥が西ヨーロッパに飛翔した」というものであるが、コブハクチョウは一日せいぜい100kmしか飛べないので、この説で本件を説明するのは無理がある。もう一つの可能性としては、「西ヨーロッパの各地にはコブハクチョウの周年生息地があり、ここに寒波の影響で他の地域から水鳥が移動してきた」というものもある。「不幸な出会いが疫病の原因になる」ということもあながち的外れでもないのでしょうが、今回の「出会いを演出」するファクターは「寒波」だったのでしょうか? 
 南アフリカにはアフリカ馬疫(AHS)という恐ろしい病気(馬にとって)があるが、この病気は10年~15年の周期で大流行を繰り返してきました。Natureの397,574によれば、この病気、不思議なことにEl Ninoの発生時期に流行することがほぼ確定しています。El Ninoになると海水温が上昇し、アフリカ南東部で雨が降りやすくなります。これにより、AHSウイルスのvectorであるブヨが大量発生し。水と草を求めてやってくるシマウマ等の血を吸い、感染が拡大するというスキームです。
天候条件の変化などがまさに「環境因子」として働くというわけです。
 NYTimes March 6、SlateのExplainer March 8

Thursday, March 09, 2006

Genome ResearchがCSHLPより刊行されて10年が経過したとの事です。Nature geneticsHMGの創刊後に刊行されたことから、他のCSHLPのジャーナルに比べればやや印象の薄い雑誌となったのかなと思いますが、玄人好みの渋い雑誌ですね。刊行後はGenomicsに急速に追いつたのも事実で、創刊10周年なのかと思うと時の経過は無為慈悲だなと思います。
 特集号を手に取ると、酵母、真菌類、シロイヌナズナ、穀物、腺虫、ショウジョウバエ、ホヤ、魚類、ニワトリ、家畜、イヌ、実験動物等のgenomicsに関して、その道の専門家がscopeとretrospectiveを提示しており、民主的だなーと感じた次第です。
 で、読んでとても面白かったのは、Ostrander とWayneのThe Canine genomeのセクションでした。ヒトの集団における平均的な連鎖不平衡のインターバルはD’0.5=0.028Mbと考えられるのに対して、イヌは品種毎でかなり開きがあるというものです。Golden retrieveはD’0.5=0.48Mb, Labrador Retrieverは0.81Mb、最も近親交配の進んでいるAkitaで3.7Mbといった具合で品種間で実に10倍近い開きがあるわけです。
 ホールゲノムによるassociatiation studyをデザインするとしたら、ヒトでは5x10^5のSNPを調べなければ無理と推察されるのに対して、品種によりますがイヌでは1X10^4の座位を診たら良いわけで、同じ力技をやるにしてもこっちが「賢いネー」となります。既に、イヌにおいても2.1x10^6程度のSNPが見出されており、面白い成果が出てくるのでしょうね。
 Genome Research 15:12

Wednesday, March 08, 2006

横浜マリノスの中軸である久保選手の腰痛が再発したようで、彼への依存度が高い代表チームの戦術はどうなるのかと気が気ではありません。久保選手には焦らずに治療に専念してほしいと思います。
 ワールドカップがらみの話題ということでドイツに思いをめぐらせると、日本の青年たちはドイツでどのうような過ごすのでしょうか?日本人に馴染み深いとものといえばBMW やメルセデスの自動車産業ということになるのでしょうか?浦沢直樹の「モンスター」の読者はさすがにドイツの地図を思い浮かべることができるでしょう。あるいはWim Wendersの作品の支持者はベルリンに思いを馳せるだろうな。サッカー好きにとってはやっぱり南のミュンヘンが気になるところでしょう。僕の興味といえばノイエピナテークのKaulbachだったりECMレーベルということになります。恥ずかしい話でRarumシリーズのCDはほとんど所有してないのですが…。
 ECMレーベルの記念すべき第一作は、当時幾分影の薄かったMal Waldronに録音させた”Free at last”だということです。ECMというレーベルに関する印象としてはJacketがクリーンだなということぐらいで、好きな音源を並べてみたら意外なほどECMが多いことに気づいき、びっくりしたといったところです。ですからマネックスの社長さんのようにECMを特別意識してきたわけではありません。
AECやCarla Bley、Friesell、Jarrett、DeJohnette、Methenyの重要な作品が、Manfre Eicherの強い影響で製作されたことに気づいたのもつい最近だったと告白したら、先輩諸氏には笑われるのでしょうね。本当に恥ずかしい回り道をしたものです。
同レーベルが安定したのはChickのなにやら禅問答というか仏教的なタイトルのアルバム「Return to Forever」が爆発的にヒットした後だということですね。これが無かったら、Keith Jarrettの復活も無かったかもしれませんし、もちろん”The melody at night, with you”も聞けなかぅたのかもしれませんね。そういう意味じゃ、いい音源が売れることはすごく大事なことです。日本でも澤野工房が注目されていますが、もっともっと売れて欲しいと思います。ECMの良いところはNationalityに関係なく様々なアーティストに活躍の場を提供してきたところですかね、最近Amazon.comの音楽のコーナを覗くとJazzのセクションには日本からの輸出版が結構ありますので、東芝さんの踏ん張りに期待したいです。ノートPCも東芝を使い続けておりますし。

Tuesday, March 07, 2006

昨年の総選挙以来、日本人の関心は急速に国内問題へとシフトしている。郵政公社の民営化をめぐる政治家の議論のお粗末さと行動の遅さにいらだつ国民を小泉がうまく釣ったところから話が動き出した。実際のところ郵政民営化の議論を正確に押さえている人なんて殆どいないと思っていい。民主党が負けたのは政策論争というよりも「空気が読めなかった」ことに尽きる。今も間抜けな政争を仕掛けようとしているが、本当に必要なのはスピード感と明確な軸(必ずしも明確に表明する必要はないが)なのだということを分かって欲しい。国民の方がよほど危機感をもっていますよ!
 日本では「耐震偽装」と「ライブドア事件」が一服し、「オリンピック」もバイバイということで、次ぎのネタは「小泉の後継者」探しという状況ですが、国際情勢は混沌としている。宗教的なタブーと表現の自由をめぐるパラノイドが世界中を覆い、西欧のメディアは「文明の衝突」を避けようという立場か、理性的な議論に誘い込もうという態度をとっているように見える(たまには根性の座った奴が喧嘩を吹っかけています)。無論、こうしたパラノイドが起きた背景は明白だが、泥沼から脱却する処方箋はいまのところ見つかっていない。いまさらブッシュを責めたところで、中東における真空地帯を放置していいという話にはならないし、第一、敵失に乗じてこそ泥を働く連中を放置する米国でもないでしょ。チキンゲームは続くといったところでしょうか。

「ジャイアンと付き合っていかなければならないノビタは、どらえもんの帰りを待ちわび、今日もゲームに興じていました」。

p.s. Francis Fukuyamaの本がでるらしい。NYtimesやSlateにポツポツ書評が出ているが、どんな言い訳するのかチョット読んでみたい。どうでもいいけどChristopher Hitchensは相変わらず激しいね。
Slate March 1st、"End of Fukuyama" by Christopher Hitchens,
"America at Crossroads" by Francis Fukuyama,

Monday, March 06, 2006

Yaleの精神薬理学の教授であるDumanは、キャンパスからほど近い場コネッチカット精神医療センターに研究室を構えている。うつ病の原因と薬理学的な機作について興味があった彼は、うつ病がここ40年来信じられてきたようにセレトニンの欠乏に起因するという単純な仮説では説明できないことに気づきました。ProzacやZoloftを摂取すると急激にセレトニンレベルは上昇するのに、それだけでは精神状態は改善されないのです。臨床家の間では数週間服用し続けて徐々に症状が緩和することが知られており、この時間差が何を意味するのかという疑問に触発され研究を続けられました。彼の結論はプロザックはセレトニンシステムとは無関係の神経栄養因子の産生を促すというものでした。 
ウツ病などではどのようなメカニズムによって脳内での神経栄養因子の産生が抑制されるのでしょうか?社会的なストレスにより、サルの脳では海馬に解剖学的な異常が示すことが他の研究者によって示されていますが、ここでも神経栄養因子の欠乏が重要と考えられ、ついにGuould とDumanは別々に歩いてきた細い道から一本の幹線で合流することなりました。 90年代に入ると免疫学や発生学の領域において、細胞や組織の形成には「自己複製」と「系譜特異的な分化過程」が必要であることが示され、組織のホメオスタシスには新たな細胞の供給も必要と考えられようになりました。このような「概念の拡散」が神経生物学のパラダイムシフトに寄与した影響は測り知れません。 現在では成人においても神経幹細胞が存在することは一般に受け入れられていますが。生体内における本質的な役割については研究は緒についたばかりです。 

”Untill the scientist has learned to see nature in a different way, the new fact is not quite a scientific fact at all"

p.s ストレスによる脳のdepressionは個体にとっては耐え難いものですが、集団全体にとってはどのような意義があるのでしょうか(安全弁?)?。ルワンダやスーダンの悲劇を思い浮かべると思考は停止していまいます。

昨日今日の文書はSeedmagazine 2月号に掲載されたJonah Lehrerさんの文書から引用させていただきました。20台の新進気鋭のscienceライターだそうです。今後も応援したいと思います。

Sunday, March 05, 2006

生物学にはいくつかドグマがあって、チャレンジすると大火傷したり、場合によっては荒野で野垂れ死にする原因になることも多いのものです。もっともドグマにチャレンジするって遊びではないので、それなりのモチベーションがあって取り組む人がでてきます。神経科学におけるドグマというと、神経細胞は胎生期から生まれてからの限定的期間において生み出され、成人してからは減っていくばかりだというのが通説でした。 YaleのRakicなどは霊長類の脳細胞では細胞の分裂はないと結論づけ、「分裂できない特性と神経細胞の可塑性にはトレードオフの関係があるのではないか」と考えていたくらいです。 RockefellerのポスドクだったGouldはストレスと脳におけるglucocorticoid(副腎皮質ホルモン)の機能の関係について研究していました。ストレスによって大量のglucocorticoidが産生され、これを浴びた脳細胞が死ぬのではないかと考えていたが、細胞が死んでいるはずの場所には何も起っていませんでした。失敗した実験の原因を探そうと図書館に行ったGouldは忘れ去られた論文を見つけてしまいました。「ラットのみならず猫、モルモットでもニューロンは新生する」と書かれた論文は1962年MITのAltmanによって発表されましたが、その後、無視され忘却の彼方に消えていたのです。 Gouldは、その後の8年間、哺乳類における脳細胞の新生を証明すべく、ラットに3H-チミジンを投与して、脳切片のオートラを観察し続けました。 Gouldの研究がある程度受け入れられたのも、時代の要請と考えられますが、別方面からの援軍があったのも幸運でした。 (続きは明日)

Friday, March 03, 2006

オックスフォード大学に新たなbiomediacal labが建設される予定であったが、ひょんなことからイギリス中がメデイアフレンジーに悩まされることになった。事の発端は、当地に建設される予定であったラボで、実験動物としてサルを用いて脳神経外科的研究が行われることをアクティビスト達が嗅ぎつけ、けしからんと騒ぎ出したのだ。もともと動物実験に関して批判的な勢力の多いお国柄でもあり、簡単には騒ぎがおさまらなかった。
 ところが変なところで援軍があらわれたのだ。16歳の高校を中退した少年が手作りのPCを駆使して、動物実験を擁護するカウンター・キャンペーンを始めたのだ。「Pro-Test」と名乗る団体を立ち上げた彼だが、オックスフォードに買い物に出かけた際に、「Speak」という生体解剖に反対する団体に出くわすと、友人とともに、即座に「ラボを作れ」、「(科学の)進歩を守れ、オックスフォードを擁護しよう」と叫び始めた。
 9歳の時から、脳外科医にあこがれていたという彼だが、普通の子供がDavid Beckhamに抱くような感情を、世界的な脳外科医であるAziz教授氏に抱いているという。
 反対派もたちが悪く、どこぞの掲示板よろしく、少年の顔写真をwebに張ったり、住所を公開したりしているという。
 少年は「財産を毀損されたり、暴行の標的になるのが心配だね、でも僕の主張を通そうとしたら受け入れなくちゃならないね。だれにでも発言する自由のあるとされているこの国で、警察の厄介にならなきゃ、意見も言えないなんて悲しいね」と語っているという。
 日本の15から18歳の年代では将来に希望が持てない子が増えているという記事も最近目にしたが、「活力」、「動機付け」、「reward」が大事なのはどこの国でも変わらないだろう。

Guardian 2月25日

Thursday, March 02, 2006

バルセローナのエトー選手が、サラゴサのサポータに人種差別発言を浴びせられベンチに引っ込みかけた。FIFAが何を言ったところで馬鹿者の知能指数が向上するわけではないし、エトーが差別されたからといって彼のアスリートとしての才能が貶められるものでもない。しかし、怒りを抑えきれない。
 そこでふと思ったのは、(1)人種とはいったい何をもって定義出来るものか、(2)そもそも我々は自らの人種的な価値をきちんと認識しているのかということである。
 皮膚の色は人種に特徴的なマーカーの代表と考えられているが、法医人類学者にいわせると「上顎前出」の方がよほど当てになるというし、19世紀のアメリカでは足の形状の方がより人種に特徴的であると考えていた。皮膚の色が属内婚を忌諱するバリアーにならない社会もあるが、アメリカでさえ、人類遺伝学的な調査結果からは、白人・黒人それぞれの集団がかなりmash-upされていることが分かっている。皮膚の色は量的形質であり、ヒトでは11、9、13、 15そして16番染色体に遺伝子が存在する。ボストンやフィラデルフィアの黒人同士のカップルに比較的皮膚の色が薄い子供が生まれる確率が高いが、白人集団由来の遺伝的プールが寄与している可能性が高い。米国では人口の0.7%程度が白人とアフリカ系のadmixtureであるが、イベリア半島のポルトガルおよびスペインではそれぞれ8%、5%と推定されている。こうした推計からみると、米国では白人カップルには肌の色が濃い赤ちゃんが生まれる確率はほとんどないが、イベリア半島では0.5%を超える。アルゼンチンやチリではここ2世紀の間、多くのアフリカ系の集団を飲み込んで来たが、白人ぽく見える人が多いのもこのためだというexplanationがある。
日本人の集団遺伝学的な起源を考えるとあまり滅多なことも言えなくなるね。
BioEssay 20(1998):712-21&Am.J.Human Genet. 70(2002):770-775

Wednesday, March 01, 2006

Autobiographyの醍醐味は文中で語られていないことを探しながら読むことにある。行間を読むってやつである。
日経の「私の履歴書」は、成功譚、自慢話といったところもあり胡散臭いが、スポーツ新聞を読むよりは面白い。特に秀でたものも年に何回かはあり、そんなときは一月、朝が楽しみとなる。3月に入り、早石修氏の登場とあいなったが、昨今の捏造オンパレードの時代背景で何をおっしゃるのか想像するのは楽しい。
早石氏は復員後、医者として働こうと考えていたというが、日本の良識ある人は「にぎり飯より柿の種だよ」といって若者を基礎研究に導いたという。阪大において米国に招聘されるピロカテーズの研究をされた時も、戦後の混乱期に物資の乏しい中で、自らの研究人生を賭して精製したトリプトファンを分け与えてくれた先達がいたという。たぶん、A.コンバーグとの出会いや、NIHのサポートについて語られるのであろうが、生命誌館のサイトにあるEssayでは省かれた事実や発言も載録されるのを期待したい。  

「一燈を掲げて暗夜を行く。暗を恐れる勿れ、一燈に頼れ」古武弥四郎